集中投資とは言え世界時価総額の半分以上を占める米国の500社に投資するわけだから充分に分散投資と言えるのかもしれない。
しかもS&P500の売上地域比率はこの通りで↓
米国株インデックスとはいえ米国内での売上は56.8%、それ以外は米国外で獲得していることを考えれば世界分散投資とも言えなくない。
しかしなぜこの優れたインデックス1本に集中投資する人はあまりいないのだろうか。
S&P500への集中投資は欲との戦い。
例えばウォーレン・バフェット、または多くの投資指南書、はたまた米国株ブログでは「S&P500への投資が最適解」という事が語られている。
にも関わらず、実際にこのアドバイスを実行に移している人は極めて少ない。
かくいう自分自身もそうした情報は心得ているものの、実際にはあれやこれやそれやで日本株や新興国株、セクターETFやレバレッジETFに個別株・・・と雑多に分散投資しているのが現実である。
で、その結果S&P500を上回るパフォーマンスを残せているのかと言えば、決してそんなことはなく。毎月のパフォーマンス測定ではほぼ常にS&P500に負けている。
「じゃあもうS&P500一本でいいじゃん」その方がよっぽどいい成績を残せるだろうに。と自らツッコミをいれつつ、、世のアクテイブファンドマネージャーの大半がS&P500に勝てない現実を地で行くハメになっている。
一体どうして、「最適解」を知りながら人は、いや自分はそれを実行に移さないのだろうか。
Nasdaq100とS&P500。
S&P500へ投資すれば大半のアクテイブファンドは出し抜ける。
個人投資家にとってこのシンプルな事実を再現することはものすごく簡単で、まとまった資金、ないし毎月一定額をVOOなどのS&P500連動ETFやeMAXIS Slim米国株式インデックスファンドに投資することで実現できる。
この「簡単に実現出来る」のが実は厄介で、簡単に出来るならばもう少し手間暇をかけて、S&P500を出し抜いてみようか。というのが欲深き人間の性。
実際「ある期間を取れば」S&P500を上回る別のインデックスがあることは事実で、これに投資をしてしまえば同じく簡単にS&P500を出し抜くことが出来る。
例えばNASDAQの時価総額上位100銘柄で構成されるNASDAQ100。

青がS&P500、ピンクがNASDAQ100
ここ10年で言えば、S&P500を盛大に上回っているのが現実。こういうチャートを見るにつけ、「なんだ、だったらNASDAQ100に投資すればいいじゃないか」とS&P500を差し置いてより魅力的な銘柄に心移りするわけです。
しかし、NASDAQ100インデックスは今や6割近くがIT・ハイテク株で、ここ10年においてこれらの株が大きく市場を牽引したことを考えれば、このチャートもごく自然なこと。問題はこの成長曲線が長期に渡って続くかどうかで、過去歴史を紐解けば特定のセクターが市場を牽引し続けることはない。という不都合な真実にもぶち当たる。
ここ20年の世界時価総額ランキングがそれを裏付ける。

現在に続くIT・ハイテク株の勃興は2013年ころから始まっており、それ以前を眺めてみれば通信、製造、エネルギーと多様な移り変わりがある。ここ数年のように一つのセクターが上位独占するような事は稀だということがわかる。(そういう意味でマイクロソフトは凄い)
NASDAQはどうしても新興市場であるが為に、IT・ハイテク等々新しい技術やビジネスをコア事業とする企業の集まりになりやすい。
結果、NASDAQ100とS&P500を比較する時期を変えるとまた景色はガラッと変わってくる。

青がS&P500、ピンクがNASDAQ100
ITバブル・ドットコムバブルがピークを迎えた2000年からの比較だと、ご覧のようにNASDAQ100は未だにS&P500に追いついていない。
過去10年だけを見ればNASDAQ100がS&P500を出し抜くことは容易だったけども、過去18年に遡ればS&P500の強さが際立つ結果となる。
しかし、これも2000年の1年前、1999年にスタートしていれば・・・

青がS&P500、ピンクがNASDAQ100
この通りまたガラッと景色は変わってNASDAQ100の圧勝である。
S&P500を上回るのは簡単なのでは・・・?
こういう「ある一定期間において」S&P500を上回るインデックスは確かに存在するだけに、欲深い人間は

となるのである。
要はそういう欲が優秀なる平均値であるS&P500のみに投資することがいかにも機会損失であるかのように感じさせるのではないかと。
しかし、何事においても欲に駆られた行動が長期的には失敗を招くの事が多いように、「平均値で満足してりゃ良かったのに・・・」と途方に暮れる未来がやってくるとも限らない。
必要なのは、優秀な平均値で満足することが出来るか、足るを知る事が出来るか。という精神力。欲に駆られず淡々と何十年にも渡って同じ行動を続けることが出来るか。
そこがS&P500への集中投資が成功するか、満足出来るかの分岐点になるのだと思う。