意外な盲点でした。
生命保険料控除という税金の割引券を獲得すべく、過去2記事にわたって一般生命保険料控除と個人年金保険料控除を受けられる保険商品を紹介しましたが、大変興味深いコメントを頂きましたので検討してみます。
年間の掛金を控除満額の8万円以上にするより、むしろ8万円以下にした方が掛金に対する節税リターン効率がいい。というお話しです。
生命保険料控除を効率よく受けるには
まずはそのコメントを御覧ください。
個人年金保険控除の中の所得控除額\80,000超の枠をフルに活用しようとすると、モッティーさんの仰るとおり\7,000/月が必要となります。
所得税率5%と仮定し、この場合の節税額を年利に直すと記事にある通り\4,800で5.7%です。ではこれを\5,000/月にするとどうなるのか
所得税:\60,000×0.25+\20,000=\35,000
住民税:\56,000超のため\28,000所得税率5%と仮定した場合
所得税控除:\35,000×5%=\1,750
住民税控除:\28,000×10%=\2,800
合計:\4,550
これを年利に直すと
\4,550÷\60,000×100=7.5%掛金を\5,000/月にしますと所得税控除枠をフルに活用はできませんがフルに活用した場合と比較した場合その差はわずか\250のため、年間の掛金に対する資金効率は\5,000/月の方が良いのではないかと考えました。
掛金に対する「節税リターン」は、控除満額を受けるより掛金を下げて80,000円以下にしたほうが向上するのでは?
という指摘でした。
所得税、住民税の控除計算式
現在の所、生命保険料控除の所得税控除要件は以下のようになっています。
年間保険料 | 控除額 |
---|---|
20,000円以下 | 保険料の全額 |
20,000円〜40,000円 | 保険料×0.5+10,000円 |
40,000円〜80,000円 | 保険料×0.25+20,000円 |
80,000円超 | 40,000円 |
計算式がややこしいですが、満額40,000円の控除適用を受けるためには年間保険掛金80,000円以上が必要になります。
この満額40,000円控除を受けることが最も効率的な所得控除の受け方だと考えていたのですが、コメントにある通り実際はそうでもない事がわかります。
住民税の控除要件は以下のようになっており、
年間保険料 | 控除額 |
---|---|
12,000円以下 | 保険料の全額 |
12,000円〜32,000円 | 保険料×0.5+6,000円 |
32,000円〜56,000円 | 保険料×0.25+14,000円 |
56,000円超 | 28,000円 |
所得税とは違った計算式に当てはめることになりますが、こちらも満額を狙うより掛金を下げた方が特になるケースがほとんどのようです。
掛金ごとの節税リターン
月の掛金(年間掛金) | 所得税+住民税控除額 | 税率5%リターン | 税率10%リターン | 税率20%リターン |
---|---|---|---|---|
3,000円 (36,000円) | 51,000円 | 3,700円(10.2%) | 5,100円(14.2%) | 7,900円(21.9%) |
5,000円 (60,000円) | 63,000円 | 4,550円(7.5%) | 6,300円(10.5%) | 9,800円(16.3%) |
7,000円 (84,000円) | 68,000円 | 4,800円(5.7%) | 6,800円(8.1%) | 10,800円(12.8%) |
10,000円 (120,000円) | 68,000円 | 4,800円(4.0%) | 6,800円(5.7%) | 10,800円(9.0%) |
この表は、それぞれの掛金あたり控除金額(所得税+住民税)と、所得税率5%10%20%時の節税額と掛金対するリターンの一覧です。
毎月の掛金を3,000円、5,000円、7,000円、10,000円として試算すると実に興味深い事がわかります。表の赤マーカーで示した、掛金3,000円と5,000円ではなんと年間掛金よりも控除額が大きくなる結果になりました。
この控除額に対する各税率の節税額=得する金額とその掛金に対するリターンを計算してみると、税率が高く、そして掛金が少ないの方がより高効率に節税出来ることがわかります。
年間掛金36,000円で、税率20%の場合は節税額が7,900円、そのリターンはなんと21.9%にも達します。
冒頭のコメントにあったように、税率5%の人間がJA共済「ライフロード」に加入し、掛金を月5,000円にした場合と月7,000円にした場合とでは実際の節税額差は250円しかありませんが、そのリターンは掛金を少なくしたほうが7.5%に向上することがわかります。
他のどのパターンに於いても所得税控除満額の年間80,000円に近い掛金を拠出するよりも少なくした方が節税のリターン効率は高まることがわかります。さすがに月3,000円まで落としてしまうとリターン効率は高まりますが、実際の節税額は年間で1,000円以上違ってくることからあまり現実的ではないかもしれませんが、5,000円と7,000円ならば5,000円にした方が高効率だと言えます。
「じぶんの積立」と「ライフロード」の掛金変更
特に、掛金の設定が5,000円刻みの明治安田生命「じぶんの積立」は掛金を5,000円にするか10,000円にするかで節税効率が大きく変わることがわかりました。
自分自身、掛金10,000円で申込を済ませてしまったのでこれを5,000円に減額出来ないか現在問い合わせ中です。
JA共済「ライフロード」も同様に7,000円で申し込んだ掛金を5,000円に減額出来るか問い合わせましたが、こちらは残念ながら「減額は不可」とのこと。これから加入される方は掛金設定を充分検討の上申し込むことを推奨します。