PFFという海外ETFがあります。
正式名称を「iシェアーズ 米国優先株式 ETF」と言い、米国の優先株式に投資するETFです。
特徴は何と言っても高い配当利回り。最新の配当利回りは税引前でなんと5.67%(!)
ここに30%課税され、確定申告で外国課税分を取り戻し実質20%の課税とすると税引き後でも約4.5%もの配当利回りを得られることになります。しかも毎月配当です。
1,000万円を運用した場合年間の実質配当が45万円、月あたり3.75万円。
2,000万円運用ならば年間90万円、月あたり7.5万円の配当です。魅惑的です。
米国優先株ETF「PFF」、果たして現段階で投資するべき商品なのでしょうか。
iシェアーズ 米国優先株式 ETF「PFF」は毎月分配ETF
優先株式とは?
PFFで投資できる「優先株式」とは一体なんなのでしょうか?
PFFの商品紹介資料によると・・・
優先株とは、株式と債券の中間に位置する有価証券。主な特徴としては、証券を発行する企業が倒産した際の法的弁済順位が普通社債よりは下位であるため、一般に普通社債よりも高い利回りが期待される点、および議決権を持たないため普通株式よりは法的弁済順位が上位である点が挙げられます。
だそうです。議決権が無く経営への参画は出来ない代わりに、一般的な株式よりは企業が倒産した際の法的弁済順位が高い。しかし社債よりは下位に位置するのでその代わり利回りが高い。なるほど、それで「株式と債券の中間」と言われるんですね。
こんなイメージのようです↑
iシェアーズ 米国優先株式 ETF「PFF」
その「優先株式」にまとめて投資出来るのがiシェアーズ 米国優先株式 ETF「PFF」です。
基本情報
- 純資産額 約170億ドル
- 経費率 0.47%
- 組入銘柄数 296
純資産規模は充分ですが、経費率0.47%は低コストな良品が多い海外ETF市場においてはかなり高い部類です。バンガードの米国株ETFならば0.05%〜0.17%そこらでS&P500に連動するETF(VOO)や高配当株ETF(VYM)などインデックスファンドとは比べ物にならない低コストのETFが列挙されています。
優先株式という特殊性と、それに投資できるETFは他に無いことから経費率は少々高めです。近頃のインデックスファンドよりも高めです。
国別構成比率
- 米国 87.2%
- 英国 8.7%
- オランダ 3.5%
- その他 0.7%
「米国優先株式」となっていますが、国別構成比率を見てみると実は英国とオランダにも投資されています。
組み入れ上位銘柄
組み入れ上位銘柄はご覧のようにほぼ金融系銘柄で占められており、
業種別投資内訳を見ても、
- 銀行業 40.64%
- 各種金融 19.61%
- 不動産 10.69%
- 保険業 9.18%
と言うように、金融・不動産系銘柄が全体の80%ほどを占めています。
よって「株式と債券の中間」としながらも「〇〇ショック」のような株価暴落局面では株式並に下落する傾向にあるようですし、業種の偏りがかなりあるETFです。
試しにリーマンショック期を含めた値動きをチェックしてみると・・
青がPFF、緑がS&P500インデックスです。赤矢印で示したリーマンショック時を見てみるとガッチリ下げていますね。むしろS&P500より下げています。やはり金融銘柄が多く含まれるだけにその下げ幅はかなりのものですね。その後の値動きはご覧の通り。株式と債券の中間、というよりほぼ債券のように値動きがありません。
配当利回り
こちらも商品紹介資料にあった配当利回り推移を参照すると、過去5年間での利回り水準は低下傾向にあります。それでも現時点で税引前5.67%の配当利回り。
にしても、利回り8%に達していた頃もあったんですね。凄まじい。
PFFの活用法。
上記の通り、ETF自体の価額にほとんど動きは無いので、値上がり益=キャピタルゲインは期待できないETFです。
5年トータルリターンは年率換算で6.29%ですがそのほとんどがキャピタルゲインではなく、配当によるインカムゲインです。S&P500に連動するバンガードのVOOは5年トータルリターンが年率換算14.59%もありますから、その差は歴然。しかも配当からは税金も引かれるので実際のリターンは更に劣後します。
よって、「時間」を武器に資産を増殖させていく長期投資に用いるべきETFではありません。資産を「形成」するETFと言うより、資産を保全&取崩する段階で候補のひとつとして検討してみてもイイかもしれません。しかし、それも今後の政策金利が上昇に転じれば債券よろしく価額は低下するでしょうし(その代わり利回りは上がる)、そうなると資産自体の保全という目的は微妙になってきます。
私モッティは現在34歳ですが、ひとまず60歳を区切りとしても運用期間はまだ26年ほどあります。超長期投資と言っても過言ではない期間です。給与所得以外の収入源として「配当所得を得る」ことも目標のひとつなので、「毎月分配ETF」はことさら魅惑的に感じます。ですが、よくよく検討してみるとトータルリターンもかなり低く、自ずと「今の段階での利用は適切で無い」という結論に達します。
40代後半以降、そろそろ出口も考える段階で活用するくらいが吉かもしれません。それまではVYM等、インカムゲインもキャピタルゲインも両方狙えるETFをコツコツ積立るほうがベター。