喧々諤々の論争を巻き起こしている「老後2,000万円問題」。
金融庁が出した当該レポートの内容は至極まっとうで、

と普段から投資活動に勤しむ人は感じたはず。
要は「もっと適切な資産形成を若い内からしていこうよ」という事で、その部分よりも「足りない2,000万円」ばかりに焦点があたっているのはとても残念。
そしてこれを政争の具にしようと、愚かな政治家達がこぞって「2,000万円!2,000万円!!」「年金崩壊!!」と連呼。
まったく一体どうなっているんだ。。
一生労働者側にいるのか、それとも資本家側にいくのか。
年金崩壊もなにも、そもそも最初から年金だけで老後の生活が全てまかなえるだなんて、そんな都合のいい話はないはず。
気づいた人は自助努力でそれを埋め合わせるべく、NISAやiDeCoでコツコツと若年期から資産形成に取り組んではいるものの、前回の記事でも紹介したように、全体で見ればこれらの利用率はとんでもなく低い。
- つみたてNISA 1.0%
- NISA 10.9%
- iDeCo 1.6%
- 財形制度 2.3%
「全成人人口に占める割合」と言うことで、パイがデカ過ぎるのは考慮しつつも、現状ではたったこれだけの数字。
日本人は資産形成に、もっと細かく言えば有価証券に、お金を振り向ける率が限りなく低いのだ。
30代サラリーマン世帯の家計内訳
総務省統計「家計調査報告」によると、「世帯主が30代で、2人以上の勤労世帯」における月間の可処分所得=手取りの使途内訳(2018年)はこのようになるらしい。
「勤労世帯」は自営業・フリーランスを除くのでサラリーマン限定。そして「二人以上世帯」なのでDINKSも子持ちも含めた全61,279世帯の月間平均内訳がこれ。
意外や意外。もっと低いのかと思いきや貯蓄額が14.6万円、貯蓄率が34.3%と堅実な内容。世代別に見ると20代が最も貯蓄率が高く、次は30代。60代が最も低く、40代、50代、70代はほぼ同じ水準。というのが2018年の平均内訳。
貯蓄の額と率は良いとして、なんと言っても問題なのはその中身。
貯蓄14.6万円の内訳を紐解いてみると、この通り預貯金が圧倒的に多く、純粋な有価証券購入額はなんと1,477円のみ。貯蓄全体の1.0%にすぎない。
あくまで「平均値」なので、「毎月の貯蓄残高から投資に振り分ける金額がみんな1,477円」という訳ではもちろんなく、恐らくはほとんどの世帯が0円。
そこをごく一部の人々(我々だ!)が月5万とか、20万とか、30万円の積立投資をしてなんとか平均値を底上げしてやっと「1,477円」というのが実情なはず。
個人・企業年金保険金3,024円も運用に回していると仮定しても合わせて4,500円ほどにしかならず、これじゃあ公的年金以外にお金を用意するのはもちろん、財産の成長スピードは一定のまま。
よほどの高収入は別として、、お金が働いてお金を稼いでくる複利パワーによって加速度的に財産が増えていくサイクルを回さないと、いつまでたっても労働を続けなくてはならない・・・。
継続的に投資を行う習慣が必要
ちなみに2018年における「30代の二人以上サラリーマン世帯の金融財産残高平均」は628万円で、この内約6.0%を占める約38万円が有価証券とのこと。
6%でもかなり少ないが、月間平均と比べれば約6倍。
しかし、例えば積立投資のように毎月毎月少しずつコツコツと投資にお金を振り向ける「習慣」が無いことが、月間の貯蓄内訳を見ても明らかで、これこそが一番の問題。
例え少額でも積み上げるように時間をかけて運用資金を増やし、やがては労働収入を上回る収益をもたらしてくれる「資本」を育てる。
これこそが自身の稼ぐ力である「人的資本」だけに頼らない、
人生100年時代の生存戦略。
「21世紀の資本」のピケティは「経済成長率が、資本収益率を超えることはない」と言った。
労働市場から「経済成長による収益」=給料を受け取ることはもちろん大事だけれども、少しずつ「資本が生み出す収益」も手にしていかないと格差は広がっていく一方。
一生労働者の側にいるのか、それとも少しずつ株を買って資本家側に移行するのか。
これがまた幸いな事に、現代では自助努力ひとつで資本家側に移行する仕組みがあるにも関わらず、ほとんどの人はその自助努力をしないばかりか、はたまたその事実に気づいてすらいない。
という事を親切にも「人生100年時代における資産形成」レポートが示した訳だが・・・・
世間の反応はご承知の通り。
私は一歩一歩進みますよ。資本家側に。