そういえば今まであまり語って来なかった僕の本業の話をしましょう。ちょっと長いですが。
僕の本業は飲食業です。といっても自営しているわけではなく飲食店のサラリーマンです。
現在は観光地にあるそこそこ名の知れた飲食店のホールで働いています。
小さいですが全国にポツポツと店を持っていてまだまだ伸び盛りの会社だと思っています。
今の会社に転職してちょうど1年が経過。
いまのところ「転職して良かった」と感じています。繁忙期は体力的になかなかハードですが飲食業界において待遇は良い方ではないでしょうか。
飲食業界を目指して生きてきた訳ではないですが、結果飲食業で生きています。なんだかんだ3社目ですがこれまでを振り返ってみたいと思います。
社会人1年目〜ワタミ時代
ブラックで有名(だった)某居酒屋全国チェーン。
と言ってしまえばわかると思いますが、僕はワタミに就職しました。それが飲食業界で働くことになったきっかけ。
大学は美術系で飲食業とはまるで違うことをやっていたわけですが、就職が決まらず「もうどこでもいいわ!」と最後の最後でワタミに拾われました。
要は最終的に「どこでもいい!」と思えるくらい就職に対してこだわりが無かった。という事の現れで、それが就活自体が上手くいかなかった原因だと今では思います。
ほんと親には申し訳ないと今でも思いますけどね。。大学とは全く関係ない、むしろ大学にいく必要がなかった業界に就職したわけですから。
ま、それは置いておいて。
当時、「ブラック企業」という言葉はありませんでした。その言葉を聞いたのは辞めてしばらくたってからですかね。
「あ〜あれってブラックだったんだぁ」と後から知りました。
給料は良かったと思います。
当時社員は最低でも月間214時間は働かなくてはならず(もちろん簡単にオーバーする)、残業代もしっかり付けていたので初任時の標準月額報酬は26万円でした。
(ねんきんネットで探しました)
1年後に店長に昇格してからは30万〜38万(成績によって変動)でした。
1年後に(正確には1年弱)店長。というのも今では考えられない話ですが、会社全体的に出店ラッシュでイケイケだったので新入社員にもどんどんチャンスが回ってました。
実際23歳で年商1億〜2億位の店の店長やった訳ですからね。まあ恐ろしいっちゃ恐ろしい話ですが。
スケジュールは厳しいです。
17時のオープンに備えて16時に出勤。平日は深夜3時まで、金土は朝5時までの営業。〆作業が30分〜1時間あって平日なら4時前、週末は6時〜7時頃退勤。
そのまま帰れる日はいいですが、その後朝9時から研修やミーティングがある週もあれば健康診断や事務仕事が残る日もあります。そうなると帰宅が午後13時とか。
店舗が深夜帯稼働するのに対して、本部が普通に昼間稼働なので現場の人間が割を食うことは多々あったように記憶しています。
営業〜研修・ミーティング〜営業とつながってしまって、最高30時間連続働いたこともありました。
いやいや、いつ寝るんだよって。
当然、店長になってからは売上・原価・クレーム等々全てに責任が発生するので各数字が目標値に達しなければ報告会への参加、クレームがあればまたクレーム報告会への参加。
歯車がうまく回っていればいいんですが、どこかで狂うとあっという間に負のスパイラルに引き込まれることになります。
売上が下がると人件費・原価率が一気に跳ね上がり、それによって報告会へ参加。結果体力消耗。シフトを組むのが遅れ→マイナス営業→クレーム発生→売上ダウン。と更にスパイラル。
そうしてどんどん消耗していく同期や店長はたくさんいました。逆に強いやつはどんどん登っていく。入社後3年で課長になる人間もいましたし、20代の部長もいました。
同じ組の同期が30数名いましたが、1年後には半分程になっていたと記憶しています。
強い奴は残り、弱い奴は消えていく。そんな弱肉強食の世界。
ただ、そのせいか横のつながりはとても強く「しんどいけど頑張ろうな」と仲間同士助けあって、愚痴をこぼしあってやっていたと思います。
いい人が多かったなぁ。今でも当時の上司とは数年に1回は会ったりする仲。
ちなみに「ブラック企業」と世の風当たりが強くなってからはワタミも労務管理をかなり改め、現在は8時間勤務を徹底し新卒社員の離職率も一般企業並に下がったとのこと。
が、それも時既に遅し。現在は周知のように会社が消えるか消えないかまでいってしまいました。
今も当時一緒に働いた仲間が社内に残っているはずです。彼らのためにも頑張って欲しいけれど、でも今の状況は自らが招いたと言わざるを得ない。
それでも今になって思うのは「貴重な経験だった」ということ。
人生に無駄なことなどない。
自分の限界がどこにあるのか。ここまでやったらダメなんだ。ということがハッキリわかった3年間でした。
紛いにも「ワタミで店長だった」という経歴がその後の転職でかなり有利に働いたのは事実。
あれがなかったら今の自分の立ち位置はだいぶ変わっていたはず。
転職〜個人経営の飲食店へ。
そんなこんなで僕自身も3年で退職。
「このままここにいても幸せにはなれない。体を壊すか心を壊すか。どっちかだ。」そう思いました。
実は退職後、再就職したのは8ヶ月後。
貯金もあったしもうその8ヶ月間は好き放題遊んで思いっきりリフレッシュしました。
「自分にとって幸せな環境は?」ということをじっくり考えた結果、「都会の生活は自分には合わない」というひとつの答えがありました。
元々学生時代を地方で過ごしたこともあって、自分が生きていく環境の選択肢から「都会・都市」を外しました。
そして移住。
まずはホテルの住み込みアルバイトから始めて、その有期のアルバイトが終わるまでに次の仕事を探しなんとかその地に留まることが出来ました。
ここでも飲食業にこだわった訳では無かったものの、結果として飲食店で働く事に。
地元の個人経営の小さな飲食店。企業では無いので社員・アルバイトの括りもありません。ただ、面接の時に「給料は月給にしてくれ」と申し出て、時給では無く月給で働かせてもらいました。
ここでは厨房で勤務。特に調理師資格等ありませんでしたがワタミ時の経歴もあったし自分としても不安はなし。
当初は月給15万。社会保険は無し。ちゃんと毎年昇給してくれて5年後の退職時で月給24万円。但し社会保険は無し。当然ボーナスもなし。
そこでの生活はまったく幸せなもんだったと思います。
正直お金は全然っ無かったですが、
今とはまた違う、「自分の時間をたっぷりと楽しめる幸せ」そんな感じ。
その5年間、幸か不幸か恋人は出来ませんでした。というか作らなかったのかもしれません。
そのおかげが、休日は全て自分の時間。アルプスの麓の街だったので冬は毎日のようにスノボ、夏は登山やサイクリングと、好きな事を好きなだけやれる「幸せ」があったと思います。
仕事も個人店なだけに人間関係が濃すぎて少々困る時もありましたが、概ねうまくいきました。
飲食業は素人に広く開かれている職種だと思います。僕自身は素人では無かったけど、例えば「調理師免許必須」なんて所は皆無だと思うし。
要はやりながら覚えろ精神です。よほど立派な料亭、高級レストランでもない限り「やりたい奴が簡単に飛び込める」業界だと思います。
ただ、この業界の常としてあるのが「拘束時間が長く給料・待遇が低い」ということ。
5年でこの店をあとにしましたが、理由もやっぱりここにあった。
5年経った時点の給料が恐らくその店としての最高の待遇だったのではないかと感じます。
個人経営という店の「体力」を考えても恐らくそれ以上のものを求めるのは酷。
30歳に差し掛かって、「この先もこの待遇で生きていくのは厳しい。」そう思いました。
自分も独立を目指すのならばともかく。
そうでないならばある程度「規模」が無いと飲食業従業員は厳しい。
現在。飲食中小企業へ。
そして現在の職場に至ります。
自分だけの自由な時間を堪能した5年間を終えて、そろそろ収入・待遇的にも、自分の人生的にもステップアップしなければならないんじゃないか。
家族が出来てもやっていける収入・待遇がなければいけないし、家族も作る方向で考えなければいけないんではないか。
そう思って転職しました。
現在の会社はまだまだ駆け出しの中小企業ですが、全国に十数個の店を構える伸び盛りの企業。社長も若く、「これから」を感じさせる会社です。
現在の給与は29万円、もちろん社会保険がありますしボーナスもあります。わずかですが。
立地柄ものすごくピーク・オフピークの差が激しく、繁忙期は月間休日3日、拘束14時間の労働時間になりますが、閑散期は月間休日15日以上休めて一日の労働時間も最長でも9時間程度になります。
ようやく1年たちましたが年間休日数は110日弱といったところ。飲食としては至極まともだと思います。
飲食業界全体に言えることだと思いますが、基本的に万年人不足です。
厨房だろうがホールだろうが専門知識は不要で誰にでも働ける職場でありながら、前述のように「拘束長く給料低い」イメージが先行して人気がないのではと思います。
それだけに求人雑誌を開けばありとあらゆる飲食店の募集広告を見ることが出来ると思いますが、待遇はあまり良くない所が多いです。
先日もこんなコメントを頂きました。
はじめまして。いつも楽しく読ませていただいています。
僕も飲食店で働くことに興味があるんですが、募集してるのは全国チェーン店のような離職率が高そうなところばかり・・・
モッティーさんが働いているような所で働くためには調理師免許などの資格が必要なんでしょうか?ハローワークで探しても休みが極端に少ない所ばかりのため困ってます。
飲食業界についての記事を書いていただけると嬉しいです!
お金のことと関係なくて申し訳ありませんが、お答えいただければ幸いです。
まず質問にお答えしますと、僕自身、飲食で役立ちそうな資格は一切持っていませんし、前述のように資格不要で働ける業界だと思います。一部を除いて。
休みが少ない。というのが具体的に年間何日だったのかわかりませんが、100日あれば飲食としては合格だと思います。そういう世界です。
365日休まず開店するのが売上を最大化するための第一条件だと思います。経営者は皆そこを目指してやる以上、従業員の休日が少ないのは必要悪のようなものです。
とは言え、そんなことしか経営者が考えなければ行き着く先はワタミ。
今の会社はそこの所を重視してくれている社風を感じるので好きです。結局従業員を大切に出来ない飲食企業は一時代を築こうともいつか衰退します。
自分が面接に行った際はそこの部分を注意深く念入りに聞きました。
僕自身もこの会社を知ったのはどこにでもある求人フリーペーパーですから、探せばきっとあるはずです。
そして大手も「ブラック」と批判されるのを恐れて最近ではかなり労務関係を見直した所が多いように思います。
「週休3日、転勤なし、実働8時間の地域社員」という文言を見かけます。どこまで本当なのか、いかほどの給料を貰えるかは不明ですが、こういう文言すら数年前は無かったと思いますし。
「お金のことと関係なくて」とありますがそんなことは無いです。
働くこと、仕事の事はお金の話そのものです。
以上、回答になれば幸いです。