自動車保険は対人対物補償や人身傷害補償、車両保険などがその機能のメインになりますが、「特約」としてオプション的に機能を追加することができます。
中でもどの保険にも必ず存在する特約と言えば「弁護士費用特約」ですが、これは必須です。
と言うのも、実は私自身2年ほど前にバイク走行中に交通事故に遭い、
- 10日間入院
- 40日休職
- 約1年の通院
- 後遺障害12級認定
という損害を被ることになりました。
過失割合は当方1:相手方9。結果的に約1300万円の慰謝料が支払われる事になりましたが、実は弁護士費用特約を付帯していた為に相手方損保との交渉をかなり有利に、心理的負担も少なく進めることが出来ました。
特約を付ければその分保険料は上がる訳ですが、交通事故を経験した身としては、

と声を大にして言えます。
以下、自分が経験した事故〜慰謝料確定までの流れを語りたいと思います。
弁護士費用特約を使って慰謝料は約2倍、交渉の負担も激減した実体験。

極論を言ってしまえば弁護士費用特約を付帯していなくても、事故に遭った際に弁護士に対応を依頼することは可能です。この特約が補償するのは弁護士「費用」であって、弁護士に相談し交渉に介入してもらう権利は誰にでも有るわけです。
しかし、この「費用」負担が有るか無いかで心理的、実利的アドバンテージは大きく変わってきます。
自腹で弁護士費用を負担するとなれば当然着手金もありますし、成功報酬も支払わねばなりません。確定した慰謝料から払っても良いわけですが、そもそも慰謝料がどれくらいの額になるか全くわからない状態で、多額の支払い義務が生じる心理的負担はかなりのものです。交渉が難航し、いざ裁判となれば、その費用負担も発生します。結果的に良い条件で交渉が妥結すれば万々歳ですが、そうならない場合も考えられます。
弁護士費用特約があればこの辺りの心理的・経済的負担を一気に減らす事が出来、有利に事が運ぶ可能性も高まります。
相手損保から提示された慰謝料
前述した様にバイクで過失割合1:9という交通事故に遭い、付帯していた弁護士費用特約を使って弁護士に介入してもらい、約2年後に和解が成立しました。
「弁護士が介入」と言うと、いかにも揉めに揉めたような印象を持つかもしれませんが、実はそういう訳ではありません。過失割合や事故の認識等、根本的な部分での争いはありませんでした。実際に争点となったのは慰謝料の額、算出について。
一般的に交通事故の慰謝料算出基準には3パターンあると言われています。
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 弁護士基準
①の自賠責基準では、自賠責保険で賄うことの出来る範囲の賠償内容だった場合に適用されます。その限度は120万円。この範囲に収まる慰謝料額ならば法律で決められた算定方法に則って計算がなされます。この場合、恐らく弁護士に介入してもらってもさほどメリットは無いかもしれません。
②の任意保険基準は、①の自賠責基準に収まらなかった場合に適用されますが、相手損保の基準という事で、要はその損保の社内基準。端的に言えばかなり曖昧です。今回の僕の事故の場合、相手方損保が当初提示してきた金額は490万円でした。
例えばこの時点で弁護士に介入してもらわず、自分ひとりで交渉に望んでいた場合、この490万円という金額が果たして妥当なのかどうかを判断する事は出来なかっただろうと思います。
法学部を出たわけでも、法律に関わる仕事をしている訳でもない人間にとって、提示された交通事故の慰謝料が妥当か否かなど到底わかる訳は無いのです。今回、弁護士費用特約を行使した理由もまさしくこの部分にありました。事故の根本を争うつもりも無いし、相手を「訴えてやる!!!」という野蛮な感情を抱いたから弁護士の介入をお願いした訳でもありません。
ただ、相手損保に提示される慰謝料が妥当なのかどうかを精査し、妥当でないならば必要な処置を講じ、法的に妥当な金額の慰謝料を請求する。そう言った仕事を期待して弁護士の介入をお願いしました。
実際、相手方490万円の提示に対し、当方弁護士が算出した妥当な慰謝料額は1,300万円。これが③の弁護士基準になるわけですが、相手方任意保険基準と照らすと倍以上、かなり大きな乖離がありました。
裁判所和解案を仰いで確定した慰謝料

前項、慰謝料算出パターン③弁護士基準は別名「裁判所基準」とも呼ばれるように、いざ交渉が難航し裁判をしたら認められる可能性が高い基準。
要はそれだけ、②の任意保険基準が法的根拠に則っていない事の現れですが、前述した様にずぶの素人が相手損保に対し、明確で理路整然とした根拠を示して提示された慰謝料に不服を唱えるのは不可能です。
過去の判例、後遺障害の解釈、逸失利益の算定などなど。綿密な計算と法的根拠を持って弁護士は不服を唱えてくれ、これに対し相手方損保の回答は「どう頑張っても慰謝料の上限は640万円」というものでした。
当初提示額からは増額されたものの、この時点でも弁護士基準と照らすとほぼ2倍の開きがあります。ここで担当弁護士からは「裁判所和解案を仰ぐのが妥当」という連絡があり、裁判に関わる費用ももちろん弁護士費用特約で支払われることから、裁判を行うこととなりました。
損保と弁護士との直接交渉で和解に至ることもあれば、今回のように双方の和解案に対立がある場合は最終的に裁判所の和解案を仰ぐのが慣例です。結果的に当方弁護士の主張がほぼ全面的に認められる事となり、慰謝料は1,300万円で確定しました。
これにより損保側の当初案490万円に対すると約2.6倍、最終的な提示額640万円に対して約2倍の慰謝料額となりましたが、弁護士への相談・介入をお願いせず自分だけで応対していたら当初案の490万円で和解をしていた可能性も充分に考えられます。餅は餅屋とはよく言ったもので、専門家にお願いすることの有効性を痛感する出来事でした。
それもこれも弁護士費用特約を付帯していたから躊躇なく弁護士への相談が行えた訳で、もし付帯がなく自腹だったとしたら二の足を踏んでいたかもしれません。
弁護士費用。着手金、成功報酬。

今回の一件で和解が成立、慰謝料が支払われたのち、加入していた自動車保険会社より担当弁護士へ「弁護士費用特約」の保険金が支払われました。
保険金=実際に掛かった弁護士費用である訳で、その支払明細から弁護士費用の総額がわかりました。
- 着手金 101万円
- 成功報酬 138万円
計239万円でした。
もちろん全額が保険料支払いであり、こちらの持ち出しは一切ありません。これだけの金額負担が発生するとなると心理的・経済的抵抗は大きいです。もちろん確定した慰謝料から支払う手もありますが、その分慰謝料が減ることを考えると同じですね。
弁護士を探すには

事故に遭い、いざ弁護士の力が必要になった時、どうやって弁護士を探すか。という最初の関門に突き当たります。その方法は主に2パターン。
- 自分で探す
- 加入する保険会社に紹介してもらう
ほとんどの保険会社では提携する弁護士を抱えており、連絡をすれば最寄りの弁護士事務所を紹介してくれるはずです。
事故当時契約していたSBI損保も弁護士の紹介は行ってくれる様でしたが、その前に自分自身で様々な弁護士紹介サイト等を通じ、これぞと感じる近隣の事務所へコンタクトを取りました。勘に頼った部分もかなりあったと記憶していますが、交通事故案件に慣れている弁護士かどうかは気にして探しました。
その後、試しにSBI損保の弁護士紹介も受けてみましたが、地域柄さほど選択肢が無いことも手伝って、自分が探してコンタクトを取った所と同じ事務所を紹介されました。一度事務所まで足を運び面談を行いましたがその後は電話やメールでのやり取りがほとんど。
実際に介入して頂いたのは事故から1年が過ぎ治療が終了→いざ慰謝料算定。の段階で、それまでは個人的に相談やアドバイスを受ける状態が続きました。その間、相手損保との交渉は自ら行いましたが、その際も「相手損保からこういう連絡が来たがどうすればいいか」等々、要所要所でアドバイスを受け、今後の流れや裁判になる可能性等々、起こりうる事柄について事前に様々なレクチャーを受けることが出来ました。
それはそれは心強いの一言で、多くの法的問題が絡む交通事故の和解交渉を自分ひとりで済ますなど到底考えられないと感じたほどでした。
SBI損保は自動車保険一括見積もりサイト等で試算を取ってみると、ほとんどの場合保険料が最安になることが多いです。それ故に僕も最も低コストなSBI損保に加入していた訳ですが、いざ事故に遭い、その対応に触れてみると大いに不安になる事が多く、その後解約をしました。
事故時にただでさえ憔悴している中、相手方に自分で連絡を取らなくてはならず、それはかなりの負担でした。その後の対応も「安心」とはほど遠く、また、いざ自分が加害者側に回ってしまった場合の相手方への対応を考えても、多少保険料が上がってももう少しまともな対応を取ってくれる保険会社の方が良いと考え解約の運びとなりました。
しかし、保険料は確かに安かったです。
弁護士費用特約の費用

自動車保険の一括見積もりサイトで弁護士費用特約を付帯したパターンと外したパターンで見積もりを取ってみるとわかりますが、年間の保険料は概ねプラス2,000円〜3,000円といったところ。保険料は出来るだけ安いに越したことはないですが、しかし自分では対応しきれない「いざ」の為に保険が存在すること考えると、年間数千円の負担ならば付けるに越したことはない。と感じます。
保険会社や補償内容の良し悪しは実際事故にあって初めてわかるものですが、「いざ」という時の為に出来る限り備えておきたいものですね。