前回記事↓に引き続き今回もTさんとのTwitterDMやり取りの内容をご紹介。
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20代前半からの株式投資はインデックス投資信託で充分だ。
今回もTwitter DMにて22歳、会社員の男性Tさんより資産形成に関する質問を頂きました。 前回のアドバイス記事↓をご覧になり、「居ても立ってもいられなくなって」メッセージしたとのこと。 今回も2 ...
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後編はずばり「アセット・ロケーション」について。日本語に直すと「資産の置き場所」とでもいいましょうか。
「資産の配分」を意味する「アセット・アロケーション」と似ていますが、アセットのロケーションです。
非課税口座をフル活用して適切な「場所」に資産を置く。そんなアセット・ロケーションの考え方と非課税口座活用について。
まずはどの証券会社で口座を開設すべきか。
いざ投資を始めよう。という段階になってまず必要なことは投資を行う窓口、証券口座を開設することです。
野村證券とか、みずほ証券とか、SBI証券などなど。様々な証券会社が存在します。その中からまずどこの証券会社に口座を開くか。というのが最初の関門になるかと思います。
まず大前提として「自宅近くに証券会社の支店がある必要はない」ということ。
はっきり言って、証券口座を開設したからと言って証券会社の窓口に行ってあれこれとお世話になったり相談に上がったりする機会は無い、というか不要だと心得てください。
私自身も未だかつて証券会社の窓口に行ったことすらありません。そういう意味で場所は関係ないということ。
証券会社の「しょ」の字もないような田舎だろうと山奥だろうと関係ない。
必要なのはネット回線と、投資を行う「意思」のみです。
SBI証券か楽天証券で◎
ではどこの証券会社の口座を開設すべきかと言うと、、
ネット証券です。
今やどんな証券会社もネット経由で取引が出来ますが、前項の理由から「実店舗+ネット」という証券会社である必要は全くなく「ネットのみ」の証券会社で充分です。
従って候補となるのは以下ふたつ。
- SBI証券
- 楽天証券
このふたつのどちらかを選べば充分です。
合わせて、SBI証券を選ぶなら住信SBIネット銀行、楽天証券を選ぶなら楽天銀行の口座も開設しておくと、資金の出し入れ等の利便性等も高まりますのでオススメです。
例えば両社ともネット銀行内の預金残高をそのまま証券口座での買付け資金とするサービスがあります。
住信SBIネット銀行なら「ハイブリット預金」、楽天銀行なら「マネーブリッジ」と言って、ネット銀行の通常口座からこれらの口座に振替えておくことで、わざわざ証券会社へ入金をする手間を省けます。
それ以外にも、現在保有している銀行口座(例えばゆうちょや都市銀、地方銀)から毎月自動的に積立資金を引き落とすサービスもあります。
非課税口座。iDeCoとNISA。
次に考えなければいけない事は非課税口座をどう活用するかということ。
現在の制度において、資産の置き場は主に3つあります。
- 通常口座
- iDeCo口座
- NISA(通常NISA・つみたてNISA)
です。個人型確定拠出年金(iDeCo)とNISAの2つが「非課税口座」、通常口座は「課税口座」です。
何が課税・非課税なのかと言うと「利益が出た時、配当が出た時の税金」です。例えば100万円の元本が120万円になって売却=利益確定した場合、利益の20万円のおよそ20%が税金として引かれます。
配当があれば同じくその20%が税金として引かれます。それが非・課税になるのが「非課税口座」です。
よって当然、出来るだけ非課税口座に資産を置いた方が得策ですがそれぞれの非課税口座には上限や細かい条件があるので、それを理解することがまず必要です。
個人型確定拠出年金(iDeCo)
個人型確定拠出年金(iDeCo)
- 掛金毎月5,000円〜23,000円まで
- 60歳まで積立可能
- 運用は70歳まで可能
- 引き出しは60歳以降
- 各機関の運用商品(投資信託)から選ぶ
個人型確定拠出年金(iDeCo)口座は、例えばTさんのように勤務先で社会保険に加入し厚生年金保険料を納めていて、尚且企業年金等が無い場合の掛金は月5,000円〜月23,000円まで、年276,000円が最大です。
運用益は非課税ですが、iDeCoは年金なので現法では60歳まで引き出しが出来ないことになっています。
その分確実に「じぶん年金」を貯めることが出来るのですが、配分を考えないと60歳までに使えるお金が枯渇する恐れもあります。
例えば毎月3万円しか余剰資金が出ないのにiDeCoに毎月上限の23,000円を入れれば、残りは7,000円しか残りません。そんな生活を延々続ければ・・・年金積立は充分ですが、その他はかなり厳しくなっているはずです。
積立投資額が少ない内はこの辺りの配分が難しいです。
iDeCoの節税メリット
そしてもうひとつ、iDeCoにしかないメリットは掛金が所得控除になること。
所得控除=税金の割引券みたいなもの。恐らくTさんの場合、所得税の税率は5%と考えられるので住民税率10%と合わせた計15%の税率で税金を納めているはずです。あくまでざっくり言うと、iDeCo掛金の15%が所得控除の効果によって戻ってくる。とイメージして頂いてOKです。
具体的には会社での年末調整後に還付金として所得税分が戻ってきて、翌年1年かけて給与天引きされる住民税がいくらか低減されます。
この節税効果を高めるためにもiDeCo掛金は出来るだけ上限いっぱいにしたい所ですが、前述の「60歳まで」条項を考慮するとそう簡単にはいかないのが現状だと思います。この辺りはよく考える必要があります。
iDeCo口座も各証券会社や銀行によって取り扱う商品や手数料体系が大きく違います。
メインの証券会社をSBIや楽天にしたからと言って、iDeCoも同じにしなければいけない訳ではありませんが、現状ではここでもSBIのiDeCoか楽天iDeCoのほぼ二択と言って良い状況になっています。どちらかを選べば問題ありません。
実際に買い付ける商品は、SBIと楽天で異なります。手数料体系は両者同じ。予め決められた投資信託のリストから選ぶ形になるので、どんな運用商品ラインナップがあるか。という点が唯一選考の基準となります。
私自身はメイン口座をSBI証券で開きiDeCoもSBIですが、証券口座はSBIでiDeCoは楽天(もしくはその逆)でも何ら問題はありません。
NISA口座
そしてもうひとつの非課税枠がNISAです。
現在は通常NISAとつみたてNISAの2パターンあり、同時に両方での積立は出来ません。ただし、制度的には1年単位で変更することが可能で、その間他方のNISAで運用だけを継続することが可能です。
例えば、通常NISA内で1年積立した投資信託を売却せずそのままにして、翌年からつみたてNISAを利用して積立することも可能のようです。
どこの証券会社でNISA口座を開くかですが、これは最初に通常口座を開いた証券会社(前述したようにSBI証券か楽天証券のどちらか)で開くのが無難でしょう。制度的には全く別の証券会社で開くことも可能ですが、利便性から行ってもわざわざ違うところに開く利点はありません。iDeCoと違い、どこで開いても特に違いはありません。
通常NISA
通常NISA
- 2023年まで
- 非課税枠 年間120万円×5年間(最大10年間だが・・)
- 投資信託、国内外個別株、国内外ETFの買付け可。
通常NISAは年間120万円が上限で、非課税期間は5年です。5年経ってから更に5年延長すること(ロールオーバー)も可能で、すなわち最大10年間は非課税運用できます。
が、ロールオーバーの+5年は新規の非課税枠を使う事になるためその年に新たに非課税枠を使うことは出来なくなります。
例えば、2014年からスタートした非課税枠は2018年末で5年を迎え、非課税期間終了となりますが、新たに2019年からの5年間枠を利用すること(ロールオーバー)で+5年の非課税期間を得るわけです。となれば、2019年から始まる新たな5年非課税枠はロールオーバーに使ってしまった為使えず。という事になります。
Tさんが気にされていたように制度的には「2023年まで」となっていますが、だからと言って

と思うのは少し違います。
実際には2023年から始まる120万円×5年間で終了という意味なので、全ての非課税期間の終了時期は2027年末となります。
つまり今からでも2019年の120万円、20年の120万円、21年、22年、23年と計5年×120万円の600万円分の非課税枠は活用できることになります。
しかし、もう一点大事な点はもうロールオーバー制度は使えません!ということ。
前述したように+5年のロールオーバー制度は、新規の非課税枠の活用制度のひとつです。2019年投資分をロールオーバーするには2024年からの非課税枠が必要になりますが、新規の非課税枠は制度的に2023年開始分が最後です。

SBI証券「NISAロールオーバーとは?」より
ということで、2019年からの通常NISA内での投資は最長5年です。
つみたてNISA
つみたてNISA
- 2037年まで
- 非課税枠 年間40万円×最大20年間
- 対象の投資信託の中から選ぶ
非課税枠は年間40万円ながらも非課税期間が20年なのがつみたてNISAの特徴です。2037年までとなっていますが、最後の非課税期間が2037年から始まるという意味なので2057年に全ての非課税期間が終了します。
また、通常NISAでは投資信託はもちろんのこと、国内・海外の個別株やETFも買い付けることが可能でしたが、つみたてNISAはiDeCoのように決められた投資信託の商品ラインナップの中から選んで投資する。という形になります。
基本的になんでも可能だった通常NISAとはこの点が大きく違います。投資信託ラインナップはほとんどが低コストなインデックス投資信託になっているので、インデックス投資とは必然的に親和性が高いです。
また、通常NISAのようなロールオーバー制度はありません。
通常NISAと比べ非課税枠が年間40万円と少ない点が、少ない積立額との親和性が高い。という人もいるでしょうし、ETFや個別株も買いたいから通常NISAの方がいい。という人もいるでしょう。
この辺りは自身の状況をよく考慮して決めればよいと思います。
2023年までは通常NISAで行って、以降はつみたてNISAにする。という選択肢も制度的には可能です。
NISAとiDeCoを比べると分かりますが、「期限」という面では圧倒的にiDeCoに軍配が上がります。60歳まで積立が可能で運用も70歳まで可能。引き出しが60歳まで出来ない、というのも見方によればメリットかもしれません。
どちらのNISAにするか、も難問ですが、iDeCoをどう活用するか。も同じく重要な問題です。
資産の場所「アセットロケーション」を考える。
このようにせっかく用意された非課税口座は積極的に活用していきたいところです。何も知らず、ただ通常の課税口座にのみ資産を置いていたら余計に税金を取られてしまうことになる訳で、適切な資産の置き場「アセット・ロケーション」を考えること、知識を持つことは大事な要素のひとつです。
Tさんの場合は今の所年間60万円、月にして5万円の積立投資が可能なようなので、iDeCoとどちらかのNISAで満額収まる計算になります。積立額の全てを非課税口座内で運用できるということですね。
通常NISAにするかつみたてNISAにするかでまた変わりますが、まずは使える非課税枠を全て使って、それでも溢れるようなら通常の課税口座もやむなく使っていく。というのがベストでしょう。
私自身も積立投資初期はそもそもの積立額が少なく、使える非課税枠を使い切れずに

と嘆いたのを覚えています。非課税枠を余さず使い切りたい!という思いが、収入を増やす努力と支出を下げる努力の原動力になっていた覚えもあります。
投資活動が人生の全てではないとはいえ、とりあえず非課税枠を使い切れるだけの投資額は最低限捻出したい。とよく考えていました。
投資を始めるにあたり、まず知っておかなくてはいけない資産の置き場所「アセット・ロケーション」についてはざっとこんな所でしょうか。